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愛知訴訟 裁判情報

2022.02.17

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【愛知訴訟】第11回期日報告!

「結婚の自由をすべての人に」愛知訴訟弁護団の皆さまより、2/15に開かれた第11回期日とその後の報告会について、以下ご連絡をいただきましたので共有します!


●「結婚の自由をすべての人に」愛知訴訟第11回期日報告

 

日時:2022年2151330

場所:名古屋地方裁判所 第1号法廷

裁判官:西村修裁判長 植村一仁裁判官 梁川将成裁判官

内容:

 

1.裁判官の交代、弁論の更新

担当裁判官のうち平野佑子裁判官が、植村一仁裁判官へ交替しました。これに伴い、これまでの口頭弁論の結果を陳述することを確認しました(弁論の更新という手続です)。

 

2.原告第911準備書面の提出

原告らからは原告第911準備書面を提出し、弁護団の水谷陽子弁護士、石川幸平弁護士、砂原薫弁護士がそれぞれ要旨を陳述しました。

 

原告第9準備書面は、スティグマ、精神的損害と立法不作為の関係について主張するものです。

民法等が同性婚を認めないことがいかにスティグマを助長・強化・固定化し、そのことが同性カップルにどのような精神的苦痛を生じさせているか、ということについて、東京第一訴訟の原告や協力者の方々の陳述書に基づいて主張しました。

 

同性婚をみとめない民法とスティグマ  民法は、異性カップルには「結婚OK」と言っているが、同性カップルには「NO結婚」と言っている 同性婚を認めない民法は、「同性カップルは正しくない関係ってコト?」というスティグマを与えてしまう 議員などからは「種の保存に反する」「生産性ない」という差別的発言もある 同性カップルは、異性カップルと関係性の本質は同じだろうと訴えているが、このようなスティグマを受けて、日々しんどい状況にある このしんどさは単なる不快さというものではなく、著しい精神的苦痛なのだと、弁護団は主張している

 

次の原告第10準備書面は、憲法学者の大野友也准教授の意見書に基づいて主張するものです。

被告国は、本訴訟において、大野准教授の論文を恣意的に引用し、同性カップルが婚姻できないことが社会的身分に基づく差別ではないという自らの主張の論拠にしていました。

しかし、大野准教授は、差別がないなどとは述べていません。意見書では、同性カップルが婚姻できないことについて、「性別に基づく差別」があると整理し、憲法14条に違反するかどうかは厳格に審査されなければないところ、本件では憲法14条に違反する差別があると論じられています。そして、憲法14条の要請として、国が意図せずとも差別的なメッセージを発してしまっている場合、差別を抑制するための誠実な対応をしなければならないとも述べられています。

 

原告第10準備書面の前提 被告国は、被告の第4準備書面で、大野友也准教授の論文を恣意的に抜粋し、差別がないという自説の論拠に用いている  被告国が恣意的に抜粋した部分 「ここで婚姻できないのは、『同性愛者だから』という理由ではないからである。つまり、同性愛者であっても、異性との婚姻はできるのであって、同性愛者であるが故に婚姻ができないわけではない。同様に、異性愛者であっても、同性同士の婚姻はできない。そうである以上、同性婚ができないのは、『同性愛者』という社会的身分に基づく差別だとするのは難しいと思われる」

憲法14条の主張補強 大野先生は「差別はない」って言ってないよ  1 大野先生の整理は「性別に基づく差別」  「男性との結婚を女性は認められる、男性は認められない」という関係。  「女性であれば男性と結婚すべき」というジェンダー規範から逸脱したら不利益を課すという関係。  なので、「性的指向による差別」ではなく「性別による差別」  2 厳格な審査が必要   区別が憲法14条に違反するかどうかは以下の2点でチェック   ①やむにやまれぬ利益があるか   ②その利益を達成するためその区別をせざるをえないのか   本件では、そもそもやむにやまれぬ利益が存在しないし、説明もない  3 憲法14条の要請   14条は、「差別をうけない」という価値を保護しようとするのだから、意図せずとも差別的なメッセージを発信したら、差別を抑制するための誠実な対応をしなければならない。

 

最後に、原告第11準備書面は、谷口洋幸教授の意見書に基づいて主張するものです。

この意見書では、国際人権法において、家族生活を尊重する法制度を構築することが国家に義務づけられていること、その法制度の内容として「婚姻」を志向すべきと理解されていることから、憲法24条・13条の解釈について、同性カップルの利用できる法制度の構築にあたって国に裁量があるとしても、「婚姻」を志向すべきという意味で、そのような裁量はかなりの程度制約されると解するべきであると述べられています。

 

【国際人権法に基づく主張】  1 憲法との関係で法制度の構築に裁量があるとしてもかなり制約される  2 家族生活を尊重する法制度の構築は国際人権法上の義務   自由権規約17条で、家族生活を実効的に営めるように適切な措置をとるように国家に義務づけている。   自由権規約17条と同じ権利を保障するヨーロッパ人権規約8条に基づき、欧州人権裁判所は同性カップルの法的権利を認める判断をした  (2015年、イタリアの事件)  3 法制度の内容は「婚姻」を志向すべき  婚姻とは別の「パートナーシップ制度」を設けるとスティグマを形成する。  既存の制度へのアクセスを認めることが必要。  (2017年 米州人権裁判所の判断)

 

3.進行の確認

裁判長から、今後の主張立証の予定について尋ねられたので、原告側は、憲法24条に関する学者の意見書と、それに基づく主張書面を提出すると回答しました。学者の意見書は2月中に、それに基づく主張書面は52日までに提出する予定です。

他方、被告側は、原告第611準備書面について、必要な範囲で反論し、5月末に書面を提出すると回答しました。

また、原告側から裁判長に対して、今後の証人尋問についての裁判所の意向を確認したところ、裁判長は明言しませんでしたが、おそらく通常の裁判の進行通り証人尋問が実施される見込みです。

 

今回提出された書類は、Call4の「結婚の自由をすべての人に訴訟(同性婚訴訟)」で公開されているのでご覧ください。

 

4.次回の裁判の日程調整

次回期日

2022617日(金)午前1100分(第12回口頭弁論) 

名古屋地方裁判所 第1号法廷

第1号法廷は、名古屋の裁判所で一番大きな法廷です。第11回口頭弁論期日でも、傍聴席が間引かれて、傍聴人同士が接近しないように配慮されていました。次回も、同様の措置がされる予定です。

 

●期日報告会

 

期日と同じ日の午後7時から、弁護団の矢﨑暁子弁護士の司会により、WEBでの期日報告会が開催されました。

 

まず、愛知訴訟弁護団の弁護士から、準備書面の内容や期日でのやり取りについて、詳細な報告がありました。

 

また、今回の期日報告では、ゲストとして、風間孝さん(NPO法人 PROUD LIFE)をお招きして、質疑応答の機会を設けました。

風間さんからは、裁判体が変わることの訴訟への影響や、同性婚が認められないことの社会的影響・スティグマを主張することが裁判官へ与える印象についてなど、たくさんご質問をいただき、議論が大いに盛り上がりました。

 

次に、「裁判を取り巻く人」シリーズ第四弾として、九州弁護団の太田千遥弁護士と鈴木朋絵弁護士をお招きして、お話を伺いました。お二人からは、同性カップルや性的マイノリティが抱える問題について意識し始めたきっかけや、この弁護団に参加することになったきっかけ、マジョリティの立場にある人々にこの問題を伝えることの難しさについてなど、弁護士としてこの問題に取り組む熱い思いを語っていただきました。

視聴者の方からも、訴訟において九州弁護団オリジナルの主張はあるのかといった質問や、応援のメッセージが、数多く寄せられました。

 

報告会は、Youtubeのアーカイブ動画となっていますので、ぜひご覧ください(https://www.youtube.com/watch?v=s38-hrlxgHU)。

また、次回以降も、期日報告会は開催いたしますので、今回参加できなかった方も、ぜひご参加ください。


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