最新情報

NY視察報告2019

2019.08.26

  • Facebook
  • Instagram

【連載】NY視察報告!!②

Marriage For All Japan(マリフォー)代表理事の寺原真希子です。

 

須田弁護士によるNY視察報告①に続き,今回は,2019年7月1日に訪問したRichard C. Failla LGBTQ Commission of the New York State Courtについて,ご報告します!

 

Richard C. Failla LGBTQ Commissionは,裁判所内外でLGBTQに関する様々な啓発活動を行っている,ニューヨーク州裁判所の中にある委員会です。

 

私達の訪問日には,委員会の共同議長であるHon. Marcy L. Kahn判事を始めとする5人の裁判官の方々が出迎えて下さり,裁判所内の重厚な会議室の中で軽食を頂きながら,和やかな雰囲気でミーティングが行われました。

 

(前列左から2番目がKahn判事)

 

Kahn判事によれば,このLGBTQ委員会は2016年12月に設立され,共同議長2人・事務局長1人・委員23人によって構成されています。過去には裁判所がLGBTQの人々に対して必ずしもフレンドリーでなかったという反省の下,セクシュアリティにかかわらず,全ての人が裁判所システムにおいていかなる意味でも公平に扱われることを促進することを委員会の使命としているとのことです。

 

この委員会の最初に付されている「Richard C. Failla」というのは,Failla判事の名前からとったもので,Failla判事は1985年にNY市の刑事裁判所にゲイを公表している最初の裁判官として任命された後,1988年にはNY州の裁判所で判事として任命された方です。まだまだエイズに対する差別と偏見が強かった中で,彼は,エイズやLGBTQに関する様々な活動を行い,1993年に53歳という若さでエイズによって亡くなったとのことでした。

 

このRichard C. Failla LGBTQ委員会の具体的な活動内容の例として,Kahn判事からは,裁判官・裁判所職員・その他の裁判所関係者に対する定期的なLGBTQトレーニングや教育プログラムの充実などの裁判所内の活動にとどまらず,LGBTQの擁護団体・弁護士会・コミュニティグループと連携して裁判所外でも積極的に講演等を行ったり,NY州議会でも発言を行うことにより, LGBTQに関する認識を世間一般において高めていくことも行っているとの説明がありました。

それだけでも,日本の裁判所と比べると隔世の感がありますが,さらに驚いたことには,このLGBTQ委員会は,NY州の法律を変えるための活動も積極的に行っており,トランスジェンダー保護の法律や,いわゆる「ゲイ・パニック・ディフェンス」を禁止する法案の可決へ向けても尽力したようです。

 

ゲイ・パニック・ディフェンスとは,主に暴行や殺人を弁護する際に使用されることがある抗弁の一種で,セクシュアル・マイノリティによる性的な誘い等を受けたために恐怖を感じてパニックとなって暴力や殺人を行ってしまったのであって,仕方がなかったのだ,と主張するものです。

 

全くナンセンスな主張ですが,いまだにこのような主張が行われている現状がアメリカにはあるところ,ちょうどこのLGBTQ委員会訪問日の前日である6月30日に,NY市では,このような主張を禁止する法案にNY市長が署名をしたというニュースが流れていました。

 

以上,ご報告したとおり,NY州の裁判所では,裁判官自身が,セクシュアル・マイノリティの人々の人権擁護のため,裁判所の内外で積極的に啓蒙活動を行っています。

 

日本では,残念ながら,そのような状況にはなく,司法システムにおいてもセクシュアル・マイノリティの人々が困難に直面しているのが現状ですが,人権擁護・個人の尊厳の確保は人類共通のルールです。

 

今回のRichard C. Failla LGBTQ委員会の視察を通じて,私達は,裁判所・検察・弁護士会という法曹に所属する人々が,セクシュアル・マイノリティへの取り組みを連携して,かつ,積極的に行うことの必要性と意義を痛感することとなりました。

 

マリフォーは,同性婚(婚姻の平等)の実現へ向けて,法曹界へも働きかけていきます。

NY視察報告第3弾もお楽しみに☆

(Richard C. Failla LGBTQ Commission of the New York State Courtの公式サイトはこちら

 

文責:寺原真希子

 

 


BACK