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東京訴訟

2020.12.09

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【東京・第1次訴訟】第5回期日報告!!!【詳細ver.】

「結婚の自由をすべての人に」東京訴訟弁護団より、12月2日に開かれた裁判の報告が参りました!

本期日では、裁判期日の現場でのやり取りをくわしーくご報告いたします!

眠れない夜のお供にどうぞ(^^♪


【ご賛同のお願い】

詳細は、以下の裁判報告でご説明いたしますが、今回の裁判法廷における裁判長とのやりとりから、東京地方裁判所民事第16部の裁判体では、原告の皆さまの本人尋問を採用する姿勢が全くみられません。

ですので、今回の裁判期日に参加した原告と弁護士は、このままでは原告の皆さまの本人尋問が実施されないかもしれない、との危機感を覚えました。

そこで、急ではありますが、次回期日(2021224日)までの間に、本人尋問の実施を裁判所に求める皆さんの声を集めて裁判所に届けるために、ネット署名や手紙のご協力を広く呼び掛けることにいたしました。

詳細は、こちら↓の署名サイトをご覧ください!

<裁判長、同性婚訴訟の原告から「本人尋問」の機会を奪わないでください>


●「結婚の自由をすべての人に」東京訴訟・第5回期日報告

日 時:2020年12月2日1430分から1600

場 所:東京地方裁判所第103号法廷

裁判官:田中寛明裁判長、益留龍也裁判官、岡崎真実裁判官(民事16部乙合議B)

内 容:

●原告らによる書面の陳述等について

1.第5準備書面(及び同訂正申立書)、第8~10、12~13準備書面の陳述

※過去の期日で提出済みのため、要旨の説明は省略

2.第11-1準備書面の陳述

原告らは、第11-1準備書面において、被告の主張する「伝統」は歴史の事実にまったく反しており、婚姻の当事者が男女であると考えられてきたのは同性愛等が異常・不自然であるとみなす「異性愛規範」故であり、その異性愛規範が現行憲法の下では正当化の余地がないこと、及び子の福祉の点からも同性カップルの婚姻の法制化が急務であることを主張しました。

3.第11-2準備書面の陳述

原告らは、第112準備書面において、被告第2準備書面及び同第3準備書面に対する認否と反論を行い、被告の反論がいずれも失当であることを主張しました。

4.第11-3準備書面の陳述

原告らは、第113準備書面において、現行制度が同性カップルに婚姻を認めていないこと(本件別異取扱い)について、憲法141項の平等原則が適用されること、及び本件別異取扱いには合理的根拠が認められないことを主張しました。

5.第14準備書面の陳述

原告らは、第14準備書面において、原告小野さんの個別事情(生い立ちや家族構成、これまでに感じてきた葛藤、パートナーとの関係等々)について主張しました。

6.第15準備書面の陳述

原告らは、第15準備書面において、同性カップルの生活実態が婚姻関係にある異性カップルと何ら変わりのないものであること、同性カップルに婚姻を認めない日本の法制度が社会に対して「同性愛者は認められない存在である」とのメッセージを発信しており、それによって原告ら同性愛者が差別・偏見に曝されてきたことを主張しました。

7.第16準備書面の陳述

原告らは、第16準備書面において、裁判所が積極的に本件規定(同性間の婚姻を認めない民法及び戸籍法の規定)が違憲であるとの判断をしなければならず、同性カップルに婚姻を認めるか否かを立法府の裁量や議論のみに委ねてはならないことを主張しました。

8.第17準備書面の陳述

原告らは、第2準備書面において、同性婚の婚姻及びこれに類似する制度の導入に関する様々な最近の取組や社会事実の変化等について主張立証をしましたが、第17準備書面では、第2準備書面提出後の社会事実の変化について追加の主張をしました。

9.加藤弁護士からの求釈明(求釈明とは、説明を求めることをいいます)

加藤弁護士が、被告国に対して、以下の3点についての釈明を求めました。

①原告らは、原告ら第113準備書面36頁において、同性カップルも「婚姻によらずに一人の相手を人生のパートナーとして継続的な関係を結ぶことは可能である」から「本件規定による取扱いが・・・同性愛者の尊厳を傷つけるものであるとはいえない」との被告の主張(被告第3準備書面21頁)を撤回することを要求しているが、この点について撤回するつもりがあるのか。

②被告は、被告第3準備書面17頁において、婚姻制度の目的が、夫婦がその間に生まれた子どもを産み育てながら共同生活を送るという関係に対して法的保護を与えることにあると主張している。それを前提にすると、不妊の男女カップルやお子さんに恵まれなかった男女カップルについても、婚姻本来の目的に適合しないがやむを得ずに婚姻が認められているに過ぎない、ということになるが、そのような理解で間違いないか。

③現行制度では、同性カップルは結婚できず、異性カップルは結婚できる。原告は、このような差異は性的指向に基づく差異に他ならないと考えるが、被告は、被告第3準備書面18頁において「本件規定は、制度を利用することができるか否かの基準を、具体的・個別的な婚姻当事者の性的指向の点に設けたものではない」と主張している。仮に性的指向による区別ではないとすれば、どのような面に着目して区別をしていると被告は考えるのか。

これに対して、被告代理人からは、上記のいずれについても、持ち帰って検討し、必要があれば次回期日において回答する、との返答しかありませんでした。

10.弁論更新の手続き(服部弁護士及び佐藤弁護士による意見陳述)

本期日は、裁判体(右陪席及び左陪席)が交代してから初めての口頭弁論期日であったため、弁論更新の手続き(従前の口頭弁論の結果の陳述)が行われ、服部弁護士及び佐藤弁護士が、これまで原告らが主張してきた内容を総括して説明しました。

11.原告小川さん意見陳述

原告小川さんが意見陳述を行い、同性愛者であることで感じてきた不安・絶望感、パートナーである大江さんとの出会い・生活、同性同士での結婚が認められないことによる苦悩などを語っていただきました。

12.原告大江さん意見陳述

原告大江さんが意見陳述を行い、同性愛者であることでこれまで多くの偏見や差別に曝されてきたこと、社会からの受容と承認の欠如によって多くのセクシャルマイノリティが今現在も苦しんでいること、同性同士で結婚ができるようになることが大きな希望となることなどを語っていただきました。

13.原告西川さん意見陳述

原告西川さんが意見陳述を行い、一度は男性と結婚して子どもを産んだこと、異性愛者の振りをして暮らしていたときに感じた苦悩、パートナーの小野さんと出会って生命力を取り戻していったこと、2人でお互いの子ども3人を共に育ててきたこと、同性同士の結婚を認めていない法律が社会の偏見の大きな原因であることなどを語っていただきました。

●被告第3準備書面の陳述

被告国は、第3準備書面において、婚姻は、伝統的に生殖と結びついて理解されていたために男女間に成立すると考えられてきたものである、憲法241項が同性婚を想定しておらず、これを保障していない以上、憲法141項違反の問題は生じえないなどと主張しました。

●原告提出証拠(甲A第195号証~354号証、C第6号証、D第3~4号証、E第2~6号証、F第5~6号証、G第4~6号証)の取調べ

●被告提出証拠(乙9~20)の取り調べ

●当事者尋問の採用について

当事者尋問に関して、以下のようなやり取りがなされました。

1.本人尋問の必要性について

原告代理人からは、以下のような必要性の主張、及び質問がなされました。

まず、上杉弁護士からは、これまでも原告本人の当事者尋問採用を求めてきたが、今回改めて採用を求める意見書を提出していること、札幌の訴訟では当事者全員の尋問が採用され、その家族の証人尋問も行われており、大阪、名古屋、福岡でも採用されないという話は一切出ていないこと、被告は、同性婚を認めなければならないほどの社会事実の変化はないなどと主張し原告らの主張を全面的に争っているから、この社会事実の変化を明らかにするうえで、原告の尋問は不可欠であること、同性愛者一人一人の実体験の集積によらなければ社会事実を正確に把握できないこと、原告らは、自分自身の救済を求めており、どのような権利侵害があるのかについて本人の実体験と供述が必要なのは当然であること、この裁判が世界中で注目されており、先週行った院内集会の配信の視聴者は20万人以上に及んだのであり、もし当事者尋問の申請が却下されるとすれば、この裁判に対する信頼が崩れるものとして、訴訟指揮権の濫用として抗議を行うこと等が述べられ、改めて、尋問の採用を求めました。

裁判所からは、本人尋問をするかどうかは具体的な立証計画がでてから判断することだとの応答がありましたが、この点について、中川弁護士は、以前の進行協議で、裁判長は当事者の個別の事情を「夾雑物」と述べている、それがもし、当事者尋問が必要ないという意味なのであれば、立証計画の根本にかかわる問題であるから聞いているとして、裁判所の考えを改ためて問いただしました。

原告のただしさんからも、例えば車を買う時も家を買う時も保険に入る時も、パートナーと婚姻関係にないことで様々な不利益を受けている、お互いが命に関わるような状態にあるときもそばにいることもできない、各原告はそれぞれ意見陳述では言えなかったことがたくさんある等として、原告本人尋問の実施を訴えました。

これ対し、田中寛明裁判長は、当事者尋問の必要性についての考えは現状では以前と変わっていないこと、すなわち、現段階では必要ないと考えているとし、被告が反論をしたあと、原告らから立証計画が明確にされたのちに、必要性を判断する資料を出してもらってから最終的な判断する旨述べました。

2.陳述書と尋問の違いについて

①原告代理人からは、以下のような発言及び質問がなされました。

まず、上杉弁護士は、立法事実について本人尋問なしで判断はできないこと、当事者の生の声は原告本人の供述であること、陳述書はあくまで尋問の補完的なものであり、法廷で尋問されることが前提にあることを指摘しました。

また、原告の小野さんからは、私たちは人生をかけて裁判に臨んでいる、なぜ尋問をしてもらえないのか、理由を教えてほしい、との訴えが述べられました。

中川弁護士からは、陳述書と尋問の証拠価値が違う、尋問は宣誓したうえでなされ、過料の制裁があり、相手方からの反対尋問や裁判官の補充尋問にさらされる可能性がある等、厳格な手続きの中で行われるから証拠価値が高い、必要十分な立証をさせて欲しい、などとして、厳格な手続きによる証明ができない理由を裁判所に問いました。そして、原告ら同性カップルの生活上の具体的事実については原告と被告の間で存否に争いが生じないかもしれないが、最高裁判決が婚姻をするについての自由について「十分尊重に値する」と言っている中、それが同性でもそう言えるのかが、本件の問題の核心の一つだが、同性カップルの共同生活と異性カップルの共同生活で尊重されるべき度合いが違うのか、あるいは本質は変わらないのか、という判断は、法定の厳格な手続きのなかで、本人の話を真正面から聞いて、裁判官が全人格をかけて人間力で評価する事柄ではないのか、話の内容は個人の尊厳に関わるものであり、それを真正面から裁判所に直接聞いてもらえるというのが原告にとっての裁判を受ける権利(憲法32条)であるはずだ、等と述べました。

さらに、加藤弁護士は、事実に対する評価を判断するうえで、原告がどこで出会って何を食べたといった事実のありやなしやそのものは被告は争わないとしても、原告は、同性婚が認められていないことが個人の尊厳を侵害するとの主張を立てており、その意味では本人がいままでどこで出会って、どのようにつらい思いをしたのかを尋問で語ることは、個人の尊厳に違反しているかどうかという評価を判断するうえで、意味をなすのではないか、ということが述べられました。

②しかし、裁判所は、上記に対しても以下のように述べました。

裁判長は、「原告からはこれだけ資料をたくさん出しており、陳述書も生の声なのだから、それで判断しなさいということではないのか。陳述書で十分であり、現段階では本人尋問の必要性がないと考えていることは既に述べたとおりである。尋問は、事実関係についての立証手段であって、尋問自体が目的ではない。陳述書と尋問の違いは、原告の供述に対して反対尋問がなされる点であるが、被告国は、個人個人が言っている話を現段階で争っているわけではない。陳述書の内容が真摯な供述なのかどうかが問題であれば尋問が必要であるが、裁判所も陳述書は真摯に作成されたものと思っている。陳述書が真摯に語ったものでないのであれば、本人の話を確認しないといけないと思うが、真摯に話しているということであれば尋問で検証する必要はない」と述べました。

3.直接主義、口頭主義との関係

①上記に対し、上杉弁護士は、尋問せず陳述書で代えることは、直接主義、口頭主義の大原則に反するのではないか、このような社会の耳目を集めている裁判では尚更、直接主義・口頭主義の要請は高いのではないか、札幌地裁が原告全員の本人尋問を採用したのも、他の地裁で当事者尋問をしないなどという話がでていないのも、直接主義・口頭主義にも配慮したものと思われるのであるから、手段目的の話にとどまらないのではないか、と指摘しました。

また、寺原弁護士は、裁判長が本当に「原告らを信用しているから尋問は必要ない」と考えているのであれば、以前の進行協議期日で原告らの個別事情を「夾雑物」だとした発言を撤回していただけないか、違憲か否かの判断をするために尋問が必要であることは準備書面や意見書において再三説明している、と述べました。

さらに、加藤弁護士は、被告は事実認定を争わないかもしれないが、評価には本人の語り方も関係するのではないか、本人の尋問における語り方、表情、本人がどう話すかは、評価に十分意味がある等と述べました。

中川弁護士は、裁判長が否定的だというのであれば、こちらも考えなければいけない、訴訟の在り方がこれでよいのかということについて、いろいろな意見を出させていただく旨を述べ、事実認定だけでなく評価に関わること、憲法の規範的な意味に関わることであり、深刻な人権侵害かどうかは文字だけで判断できるものではなく、やはり本人の話を聞かないと判断はできない、裁判長は特殊な考え方をしていると言わざるを得ない、と発言しました。    

 ②この点についての裁判所の考えは以下のようなものでした。    

裁判長は、本人尋問は手段であって立証がその目的であること、ほかの裁判所が何を考えているのかについては把握しておらずわからないこと、理論的に違憲合憲の評価をするときの判断の枠組みにどの程度の意味があるかの話と、事実認定の証拠として意味があるかの話は次元の違う話であって、評価がどうであるかということは準備書面でやってもらう話であることが述べられ、結論としては、現段階では、陳述書が出されているので、あとは被告の反応次第であるが、尋問の必要性について進行協議の時と考えは変わっていない、つまり本人尋問の必要性はないとの考えに変わりはない、との考えが示されました。

●次回までの被告の反論について

裁判長は、被告に対し、次回までに反論の書面を提出することを確認し、本人尋問に関して、反対尋問の必要性があるかどうかを明確に示すように求めました。

被告側の反論の書面は、次回期日の1週間前(217日)までに出されることになりました。

この点について、中川弁護士から、被告に対し、原告らは第11準備書面で、被告が主張する「伝統」はない、それが歴史的事実である、との主張をしたので、それに対してどういう立証をされるのかを、明確に示してもらいたい旨求めました。

また、加藤弁護士から、被告が反対尋問を行うかどうかの意見については、早めに出してもらいたい旨求めました。被告側は、いったん、現時点では尋問請求がされていないので回答できないと述べましたが、加藤弁護士からは、これまで原告が再三尋問を求める主張を重ねており、裁判所とも尋問を採用するかしないかについて意見を交わしているのであるから、正式な尋問請求がされていないから回答できないなどというのは怠慢極まりない、との話がありました。

また、裁判所からも、陳述書や準備書面で出ている原告らの個別事情について、認否反論して争うところがあるのかということは、自ずと明らかになっているのであるから、すでに意見は出せるはずであるとの発言がありました。

これに対し、最終的に被告は、年内に出すことも検討するが約束はできない、と回答しました。

最後に、加藤弁護士から、そもそも、本件については憲法制定時から現時点までに多くの社会の変動があり、それによって憲法解釈がどう影響を受けるかが争点とされているが、被告はこれまで十分な主張立証活動を行っているとは到底思われないこと、これまで原告側が出した3通の求釈明に対して被告から1通も回答が来ていないことの指摘がなされ、被告に対し真摯に検討することを強く求め、期日は終了しました。

なお、今回裁判所に提出された書類は、Call4の「結婚の自由をすべての人に訴訟(同性婚訴訟)」で公開しております。

●次回の裁判日程

次回の期日(第6回口頭弁論期日)は以下のとおりです。

日時:2021年2月24日(水)15時00分~

場所:東京地方裁判所 103号法廷


期日終了直後の原告の小野さん、小川さん、大江さんのご感想

期日終了直後、裁判でのやり取りのご感想を原告の皆さまにお話しいただきました。

裁判終了直後のリアルなご意見をぜひご覧ください。


期日報告会

口頭弁論が終結した後、オンラインで期日報告会を実施しました!

報告会では、まず加藤慶二(かとう・けいじ)弁護士から、裁判期日の報告と解説を行い、その後、質問コーナーで視聴者の皆さまからのご質問にお答えいたしました。視聴者のみなさんからたくさんのご質問をいただきました。今回の期日での裁判長の訴訟指揮に対する質問は特に多く寄せられていました。


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